こんにちは。
ソーイングキャットの春ちゃんです。
今から15年ほど前でしょうか。
わたしが初めて亡き母の着物をほどいたとき、びっくりしたことがありました。
身頃も、襟も、袖も、一つひとつ丁寧にほどいていったら、最後には全部、幅36〜40cmくらいの長方形の反物に戻ったのです。
「えっ!? 着物って、こうなってたの!?」
そのときは、本当に驚きました。
昔の人たちは、自分が持っていた着物を、子どもや孫へ受け継いでいくものとして大切にしていました。
受け継ぐときには、一度すべてをほどいて反物の状態に戻し、洗って、必要があれば染め直しをして、また新しい着物へと仕立て直していたそうです。
しかも、一反の反物は、長さを調整するため以外は、ほとんどハサミを入れることはありません。
襟や袖を作る部分も、裁断することなく、生地を折り込みながら仕立てることで、あとから何度でも作り直せるようになっていました。
つまり、着物になったあとも、反物の「長方形」は、ちゃんと残っていたんですね。
昔の人って、本当に天才ですよねー!
着物に隠されていた(?)この事実を知ってから、わたしは思うようになりました。
これから自分が着物の生地を使って何かを作るなら、先人たちが残してくれた、この長方形ワールドの中に広がる世界観を、できるだけ壊さないで作れるものがいいなあ……って。
そして、もうひとつ。
今となっては、常夏の島・ハワイに住んでいるわたしにとって、母が娘たちに残してくれた着物を、日常生活で着ることは、ほとんどなくなってしまいました。
昔、一時期は頑張って着てみたこともあったんです。
でも、やっぱり暑くて暑くて……。
汗だくになってしまって、なかなか着物を楽しむことができませんでした。
それなら、異国の地の洋服ダンスの中で、ただ眠らせておくよりも、母の想いを無駄にしないように、できるだけ毎日、自分が手に取って触れられるものに生まれ変わらせることができたらいいなあ……とも思いました。
この二つの想いが、着物地を使って竹刀袋を作るきっかけになったのです。
竹刀袋は、長方形の生地をベースに作ることができます。
そして、着物の反物幅は、竹刀袋を作るのにちょうどよいサイズでした。
ほどいた着物をほとんど無駄にすることなく、新しい形へ生まれ変わらせることができる。これは、わたしにとって、とても嬉しい発見でした。
ただし、竹刀袋に必要な長さを考えると、着物の袖部分からは、長さが足りず、竹刀袋をつくることはできません。
つまり、1枚の着物から、同じ柄の竹刀袋を作ることができるのは、前身頃と後身頃を使った最大四本までとなります。
この理由から「きものコレクション竹刀袋」は、一着の着物からほんのわずかしか作ることができないのです。
また、着物をほどく作業も、細心の注意を払いながら、一針一針、手仕事で進めていかなければなりません。
これも、「きものコレクション竹刀袋」が一度にたくさん作れない理由のひとつです。
このように、「きものコレクション竹刀袋」が完成するまでには、手間も時間もかかります。
でも、わたしは、着物をほどいて竹刀袋を作る、この時間が大好きです。
着物も剣道も、何年にもわたって昔の人たちから受け継がれてきた、大切な日本の伝統文化です。
着物地で作られた竹刀袋を手にしたとき、そんな昔の人たちからの贈り物に、現代を生き人々が、少しでも思いを馳せていただけたら、素敵だな……と思っています。
運動音痴で、剣道なんて一度もやったことがなかった母は、ひょっとしたら、今頃、
「あらー! あんた、こんな大事な着物を竹刀袋にしちゃってー!」
なんて言いながら、びっくり仰天しているかもしれません。
でも、そのときには、私は、母にこう言おうと思っています。
「でもね、おかあさん。わたしは毎日、おかあさんが残してくれた着物と一緒に、元気に剣道のお稽古へ行っているよ。」
そうしたら、きっと母も、笑って許してくれるんじゃないかな(笑)。
ソーイングキャット 春より